脈々と生きる進取の精神
救急・予防医療と海外貢献にも力

-インタビュアー

大雄会の歴史を教えてください。

伊藤

1924年(大正13年)にこの地で祖父が診療所を開設し2014年、90周年を迎えました。進取の気性に富む祖父は結核の早期発見にドイツで開発されたレントゲン装置が役立つと聞きつけると、自分でも勉強しながら29年には国産1号機となるレントゲン装置を導入。56年(昭和31年)にはがん治療への効果に着目しコバルト装置を導入しています。
患者さんのために有利と思ったら積極的に新しいものを取り入れるのが私どもの理念ですが、その精神は開業当時から脈々と続いているのです。

-インタビュアー

そういう姿勢はとても心強いです。地域の拠点病院になってきた過程で何に力を入れ、そして今後、注力していきたいことは。

伊藤

特に機能充実に注力してきました。まず救急体制を充実すべく資格を持った医師、看護体制を充実させ、救急分野で一番高いレベルの医療を提供する救命救急センターとして認可されています。
これから少子高齢化がますます進みますので、医療費がかなり抑制されてくるのと同時に時代に即した医療体制を考えていかなければなりません。在宅医療や介護が重要になると考えています。
予防医療にも注力していきます。健診が入り口になりますが、年間で3万人以上に受診していただいています。さらに遺伝子レベルで根本的に病気にかからないようにしていく研究を始め、遺伝相談室を開設しました。

-インタビュアー

具体的にはどのような取り組みですか。

伊藤

DNAを読み解くことで、例えば乳がんや子宮がんになることが分かれば原因部分を予防的に切除したり、細かく経過を追って早期発見が可能となります。遺伝子により治療時に選択する薬のタイプが分かることも患者さんにとってのメリットです。現在は、医師のほか認定遺伝カウンセラーが対応しています。
海外貢献ももっとしていきたい。かつてミャンマーは医療機器に関しても厳しい輸出規制が敷かれ、遅れた医療体制の中、多くの人がささいなことで命を落とす状況でした。そこへ磁気共鳴画像診断法(MRI)、コンピューター断層撮影(CT)や血液検査用機器などの寄贈を続けています。今でも私どもの放射線科の部長が現地の学会で特別講演をしたり、ミャンマーの医師に当院で研修してもらう活動もしています。地域だけでなく、できるだけ多くの命を救う機会があればそれに貢献したいと思っています。

社会医療法人大雄会 理事長
総合大雄会病院 院長
伊藤伸一氏

1956年愛知県一宮市生まれ。83年愛知医科大学医学部卒業、88年奈良県立医科大学大学院修了。日本人間ドック学会専門医・認定医、医学博士。93年医療法人大雄会理事長に就任。老人保健施設アウン施設長、大雄会第一病院院長などを経て、2003年より学校法人研伸学園理事長、12年より総合大雄会病院院長。現在は日本病院会愛知県支部理事、日本医療法人協会副会長、愛知県医療法人協会理事、愛知県放射線科医会会長、愛知県病院協会常務理事も務める。

  • 総合大雄会病院の受付

    総合大雄会病院の受付

医療機関にリーズナブルなガスコージェネ
電力供給、給湯、空調にむだなく活用

-インタビュアー

エネルギー利用に関してもいろいろ工夫されていると伺っています。

伊藤

医療はとてもたくさんのエネルギーを使います。長らくエネルギーの利用は系統電力だけに頼っていましたが、先代が1991年に老人保健施設を造った際、複数のエネルギーを利用すべきと考え、ガスコージェネレーションシステムCGS)を導入しました。ガスを使って発電を行い、発電時の廃熱を給湯に利用できるため、たくさんのお湯を必要とする医療機関にとっては、とてもリーズナブルなものだと実感しました。それ以降の建物建築の際には必ず導入しています。

-インタビュアー

空調にもガスを利用されているそうですね。

伊藤

廃熱投入型ガス吸収冷温水機(ジェネリンク)の導入によりCGSの廃熱は冷暖房にも利用されています。

-インタビュアー

エネルギーをむだなく使えるのですね。

伊藤

そこがいいところだと思います。病院にとって空調は非常に重要で、病気で弱っている方はちょっとした寒暖の差で体調を崩してしまいます。だからエアコンを使わない時期はほとんどありません。
また当院を含め、近年、病院は高層建築化が進んでいますので、ガラッと窓を開けられる病院は減っていると思います。落下事故などを防ぐためにも窓が開けられないようになっています。したがって、ますますエアコンが重要になっているのです。
空調をよく使う病院側としては、エネルギーを電気だけに頼ることはコスト面でも現実的ではありません。そのような中、ガスシステム導入により電力のピークカットをすることができたので、コスト面でもガスシステムの導入は正解だったと思っています。

  • 総合大雄会病院に設置されているガスコージェネレーションシステム
    1991年以降、新しい建物には必ずガスコージェネレーションシステムを導入している大雄会。快適な環境づくりと災害時の安心に貢献している。

  • 総合大雄会病院に搭載されているジェネリンク

停止が許されない病院のエネルギー管理
防災面でもガス利用が威力発揮

-インタビュアー

防災面で効果を実感されることはありますか。

伊藤

当院は、災害拠点病院にもなっています。計画停電を経験したことはありませんが、CGSにより、ガスで電気をつくることができるため、安定的な電力を確保できると安心感を持っています。

-インタビュアー

震災時など、ガス、電気の両方が使えた方が、ライフラインの確保に有利な印象がありましたが、一般の家庭でもエネルギーの選択肢を持つのは大切だと思います。

伊藤

私どもは病院の運営上、できる限り省エネを進めていますが、患者さんに使うエネルギーだけは決して節約できません。
エネルギーがないと医療は無力です。手術中に電力が途切れたら真っ暗で何もできません。CTで写真撮影するにも多くの電力が必要ですが、省エネのために電力を半分にするわけにはいきません。機械を温めるのに15~30分必要ですが、救急で運ばれてきた瀕死の患者さんをその間待たせることもできません。
医療現場はこのようにエネルギーコントロールが難しく、一瞬でも切れたら困る上、待機で必要な電力もばかになりません。そういう意味ではガスでも発電ができるシステムを導入し複数のエネルギーを利用することは、安心して医療が提供できる体制には欠かせませんね。

-インタビュアー

医療で欠かせない電力供給と快適な医療環境維持にガスシステムが生かされていることがよく分かりました。本日はありがとうございました。

  • 総合大雄会病院の屋上ヘリポート

  • 総合大雄会病院の救命救急センター

アクセス

総合大雄会病院

〒491-8551 愛知県一宮市桜一丁目9番9号
電話 (0586)72-1211(代) URL http://www.daiyukai.or.jp/
JR 尾張一宮駅、 名鉄一宮駅より徒歩約10分

[取材日]2014年11月4日

日本経済新聞 名古屋支社版 平成26年12月12日朝刊掲載 「Ecology Case Study」広告特集より転載

廃熱投入型ガス吸収冷温水器「ジェネリンク」について

今回登場した廃熱投入型ガス吸収冷温水器「ジェネリンク」についてはこちらをご覧ください。

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