3つの日本一を目指す
市民の声を反映した新病院

-インタビュアー

常滑市民病院の歴史や理念を教えてください。

中山

1959年に開院し、常滑市内で唯一の公立病院として地域医療を担ってきました。築50年以上経過し、老朽化も進んでいるため、今年5月に新病院への移転・開院を予定しています。新病院建設に当たって、市民の皆様の意見を伺う「みんなで創ろう!新・常滑市民病院100人会議」を組織し、市民、行政、病院スタッフが意見交換を重ね、基本理念として、小さいからこそできる「コミュニケーション日本一の病院」の実現を目指そうと決めました。

-インタビュアー

「コミュニケーション日本一の病院」とは、具体的にはどのような内容ですか。

中山

3つの日本一を目指します。1つ目は、「顧客コミュニケーション」。患者さんはもとより、市民の皆様のニーズをしっかりと受けとめ、適切な情報を提供し、人間味豊かな医療・予防サービスを実践します。
2つ目は、「スタッフ間コミュニケーション」。自らの専門性を最大限に発揮しつつ、互いの垣根を越えて協力し、病院全体が一つのチームとなって、患者さんのために、質の高い医療を実践します。
3つ目は、「地域連携コミュニケーション」。開業医をはじめとした地域の医療機関や介護福祉施設、行政などと連携し、一体となって、市民の皆様が、健康で安心して暮らせる地域社会を目指します。

-インタビュアー

地域の皆様とのコミュニケーションを心掛け、予防医療に積極的に取り組まれているとお聞きしました。

中山

高齢者を中心に医療需要の多い整形疾患や市民の疾患比率が高い糖尿病・腎疾患に応じた健康教室として「骨太教室」「糖尿病教室」「腎臓病教室」を開講しているほか、年1回の病院祭では来院いただいた方々の健康チェックを行っています。また当院の医師や看護師が地域のイベントに参加して健康チェックを行う「健康ひろめ隊」や、子育て支援センターでの小児医療ミニ講座「もしもしナース」など、院外での医療啓発活動も積極的に実施しています。

-インタビュアー

新病院の規模などを教えてください。

中山

常滑市内のニュータウン「飛香台」を背景とした広大な土地に延べ床面積約22000平方メートル、地上7階建て、病床数267床の病院を建設しました。特定感染症病床、回復期リハビリテーション病床、救急医療センター、健康管理センターなどの付属施設があります。医師、看護師、コメディカルスタッフその他の職員含め、約350人の常勤スタッフで運営します。
海岸から3キロメートル以上離れた標高30メートルの高台に建ち免震構造などで地震、津波に対しても強く、災害時でも医療が継続できる環境を目指しました。

常滑市民病院 病院長
中山 隆氏

1977年名古屋大学医学部卒業後、常滑市民病院に勤務。財団法人癌研究会附属病院での外科研修、名古屋大学医学部附属病院、国民健康保険坂下病院での勤務を経て、87年より再び常滑市民病院の外科医として勤務。外科部長、麻酔科部長、手術センター部長、地域連携室長、副院長を歴任し、2011年4月に院長就任、12年4月に感染症対策室長兼務、13年4月に常滑市病院事業管理者就任、現在に至る。日本消化器外科学会指導医、日本外科学会専門医。

  • 5月に開院する常滑市民病院のエントランスイメージ

    5月に開院する常滑市民病院のエントランスイメージ

エネルギーの多重化で
省エネと防災を両立

-インタビュアー

新病院で省エネを実現するために、エネルギー設備に関して考慮されたポイントはありますか。

中山

ガスコージェネレーションシステムや廃熱を利用した熱源設備であるジェネリンクなど、省エネ性能が高い設備を複数組み合わせることで、病院の使い勝手にあわせてきめ細かく省エネ運転ができるようにしています。空調設備はガスと電気の両方を導入しており、季節や時間帯によって運転する機器を選択することで、省エネ性やコスト削減を考慮した運転をできるようにしています。
また、建物内の空調負荷を減らすため窓をペアガラスにして断熱性を高めたり、照明の一部を低発熱のLED照明にしたりしています。さらに自然エネルギーを利用するため太陽熱パネルを設置して太陽熱を給湯に活用しています。

-インタビュアー

防災に関して考慮されたポイントはありますか。

中山

大きな災害が起きた際、知多半島内で新たに建設される自治体病院として、きちんと機能できなければ意味がありません。事業継続計画(BCP)を考慮し、電気、ガス両方使うことで、どちらかが途絶えた場合にも、運転が継続できるようにして、病院運営に支障がないようにしています。停電になった際でも、非常用電源により、72時間対応できます。
都市ガスは耐震性能に信頼のある中圧配管を導入し、電気は高圧2回線での受電、水は敷地内井戸からの井水供給とすることで、災害に強い体制をつくりました。

  • 新病院に設置されているジェネリンク

    新病院に設置されているジェネリンク

ESとFMを一体化
経営メリットを追求

-インタビュアー

エネルギーサービス(ES)とファシリティーマネジメント(FM)は、ESがエネルギーを供給する側、FMがエネルギーを使用する側の立場で別々の事業者が管理するのが一般的のようですが、新病院では同じ事業者へ委託するという新たな取り組みを実施されるそうですね。

中山

新病院は空調熱源、給湯熱源、非常用発電機などの設計・施工・メンテナンスを一括してES事業者に委託することで、省エネと設備管理の負荷軽減を目指します。設備管理を委託することで、昨今の技術者不足による人件費の高騰や雇用問題なども解消できると考えています。
また、室内の照明や空調機械などの点検・修理・清掃を一括して行うFMを、ESと同じ事業者に委託しました。別々の事業者が実施した場合、例えばES側で中央熱源を効率よく運転していても、FM側で空調フィルターの清掃管理が行き届いていなければ、病院全体としては省エネになりません。ESとFMを同じ事業者に委託することで一体的に管理できるため、より効果の高い省エネが実現できると考えています。
今回の取り組みにあたり、名古屋大学大学院環境学研究科の奥宮正哉教授にご協力・ご助言をいただきました。奥宮教授は建築設備に関する研究を中心に行っており、全国の学会や委員会でもご活躍されています。当プロジェクトでは、ES・FM事業者の選定や設備設計・エネルギー管理に関して、これまでの研究成果に基づいた実践的なアドバイスをいただいています。開院後も省エネの実現に向けて継続してご協力いただく予定です。

-インタビュアー

今後、ESとFMに期待することを聞かせてください。

中山

今回、ESとFMを東邦ガスグループにお任せする予定で、現在も新病院の建設に関わってもらっています。開院後はエネルギーを供給するだけでなく、それを使用する病院側の立場にも立っていただき、病院にとって最もメリットのある運用に取り組んでいただきたいと思います。また、省エネはもちろんのこと、患者さんや病院関係者が快適に過ごせる環境を整えていただくこともお願いしたいと思います。15年間という長期間契約ですが、その時々の病院運営や設備状況に応じて、最適な管理を実施していただき、継続的に環境性や快適性の向上に努めていただけるよう、期待しています。

-インタビュアー

開院を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

東邦ガスグループの総合ユーティリティーサービス事業

  • 新病院に設置されているガスコージェネレーションシステム

    新病院に設置されているガスコージェネレーションシステム

  • 新病院の外来ブロック受付

    新病院の外来ブロック受付

アクセス

常滑市民病院

〒479-8510 愛知県常滑市鯉江本町4丁目5番地
電話 (0569)35-3170(代表) 
URL http://www.tokonamecityhospital.jp/
名古屋鉄道 常滑線 常滑駅より徒歩約10分

新病院(2015年5月1日より開院)
愛知県常滑市飛香台3丁目3番地の3
セントレアライン 常滑ICより 自動車約2分

[取材日]2015年1月20日

日本経済新聞 名古屋支社版 平成27年3月13日朝刊掲載 「Ecology Case Study」広告特集より転載

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