名古屋女子大学を訪問。100周年を機に、汐路、天白の2学舎に分散するキャンパスを汐路学舎に統合するため新校舎建設が進む同大学法人本部法人参事補・財務課長の早瀬雅明氏に大学の歴史や特徴、エネルギー利用について聞きました。
管理栄養士養成でトップレベル
100周年機にキャンパスを統合
- -インタビュアー
-
名古屋女子大学の歴史と教育理念を教えてください。
- 早瀬
-
名古屋女子大学の前身となる名古屋女学校が設立されたのは1915年(大正4年)であり、本年、創立100周年を迎えました。創立者である越原春子は「親切」を学園訓とし、女性が学問に励むことが社会的自立の道であり、ひいては文化の向上に寄与することであると諭しました。さらに「女性自らの努力による男女平等」をうたい、そのために女性が「高い教養と職能」を身に付け、経済的に自立する必要性を訴えました。1950年、短大設立時に越原春子が学生に贈った「よき妻であり、やさしい母であり、そして力強き職能人である『新しい日本の女性像』を待望しています」という言葉からも女子教育にかける熱い思いが伝わってきます。この熱意は今なお、時代を超えて受け継がれています。
- -インタビュアー
-
幼稚園から大学院に至る長期にわたって、建学の精神に基づいた教育を受けられるわけですね。学園の規模と特徴を教えてください。
- 早瀬
-
大学で2400人、短大で600人、中学校、高等学校、大学院まで4300人が学ぶ女子総合学園で、卒業生は延べ5万人に及びます。
大学は家政学部と文学部の2学部5学科で構成されます。特に管理栄養士を養成する家政学部食物栄養学科は管理栄養士国家試験合格率100%と全国トップレベルを誇ります。主に小学校教員を養成する文学部児童教育学科の小学校教員採用試験合格採用率は50%弱と全国平均を上回る合格率をキープしています(いずれも14年実績)。就職率も大学で97%、短大で95%強(いずれも13年度就職決定率)と就職への強さも誇っています。
- -インタビュアー
-
2つのキャンパスを汐路学舎に集約されると伺いました。
- 早瀬
-
天白学舎の文学部を汐路に移転するため、新校舎の建築工事を進めています。近隣の国有地、約8000平方メートルを取得し、新たに図書館棟、講義棟、体育館、運動場を整備しています。これによりキャンパスが分散しているために生じる学生の時間や機会のロスをなくせるほか、これまで交流があまりなかった家政学部、文学部の学生間の交流機会を増やせます。また1、2年次の教養教育を基本的に共有しようとしており、学校の運用効率化とともに授業の中での学生の交流機会創出効果に期待しています。
- 学校法人越原学園
法人参事補・財務課長 - 早瀬雅明氏
兵庫県生まれ、名古屋市育ち。慶応義塾大学卒業後、地方銀行、ベンチャーキャピタル、海外証券法人に勤務、2006年に学校法人越原学園に入職。財務課長および法人参事補として法人業務全般およびSD(省エネ、アクティブラーニング、コーチング等の職員研修)に従事。ランニング歴14年、自然を愛し、野山を駆け巡るトレイルランナー。
-
実験を特色にした授業風景(食物栄養学科の生化学実験)
-
実験を特色にした授業風景(家政経済学科の食物学実験)
ランニングコストを重視
ガス空調で環境性、経済性を向上
- -インタビュアー
-
汐路キャンパスへの集約は環境性や省エネルギーの観点でも効果はありますか。
- 早瀬
-
2つのキャンパス間に走らせているスクールバスの運行をなくせるので、年間70トン近い二酸化炭素(CO2)排出を減らすことができます。新校舎では省エネ性能でトップランナーの機器を導入できることも大きく、学校全体で年間100トン近いCO2削減が期待できます。
- -インタビュアー
-
これまでも省エネ活動に積極的に取り組んでこられたそうですね。
- 早瀬
-
教職員が一体となって「省エネ巡回」を推進してきました。1日2回、講義室などを巡回し、照明の消し忘れがないかなどを確認しています。基準を超えて冷暖房している場合などもありますので、その場合は在室の学生にも調整を促したりしており、学生の環境意識を高めることにもつなげています。
- -インタビュアー
-
エネルギー設備を選ぶときのポイントを教えてください。
- 早瀬
-
特にランニングコストを重視しています。例えば本学では約13年前からガスヒートポンプ(GHP)によるガス空調を採用していますが、電気空調と比較すると、電力デマンドの削減効果が大きく、ランニングコストを削減することができました。電力消費量が少なく省CO2で、環境にも優しい空調システムだと思います。近年では高効率GHPエグゼアも登場してGHPの性能がますます向上しており、省エネ性、環境性、経済性などの観点から総合的に優れていると評価しています。
GHPで寒い朝でも迅速暖房
最適な教育環境を整備
- -インタビュアー
-
ランニングコストのほかに、効果を感じることはありますか。
- 早瀬
-
暖房のハイパワーさに魅力を感じています。省エネルギーにもかかわらずパワーがあるため、講義室など大きな空間の暖房の効果がすぐに確認できます。できる限り短時間で授業ができる環境を整える必要があるため、学校施設において重宝しています。空調の稼働時間を抑えても、快適な学習環境を保つことができることはガス空調ならではの効果ですね。
寒い時期、朝一番の授業でもGHP導入後はすぐ暖まるようになったので、空調が利いていない、足元が冷える等のクレームがなくなりました。管理栄養士の国家試験に向けて学生が追い込みの勉強をするのは一番寒い時期なので、女子教育機関としてとてもありがたく感じています。
- -インタビュアー
-
女性に優しい教育環境の整備にも役立っているのですね。今後、新校舎におけるエネルギー利用について教えてください。
- 早瀬
-
いま教育が知識偏重から、学習者中心のアクティブラーニングに大きく変わりつつあります。大学には、学生がどういうスキルを身に付けて、得た知識をどう主体的に生かせるかという質を保証することが求められてきます。そうした教育に対応するために大きく変わるのは例えば図書館の在り方です。これまでは自学自習する場所でしたが、これからは複数で議論したり、グループワークする場としての色合いが強くなり、開放的な空間が必要になります。新しい図書館にもラーニングコモンズを整備しますが、空調も広い空間でしっかりした性能を発揮できなければなりません。そういう意味でGHPエグゼアの性能に大きく期待しています。
これ以外にも、現在建設中の新校舎ではLED照明を採用して電気使用料のコスト削減を図っていく予定です。今後は、環境負荷が少なく防災機能に優れた「学校施設のゼロエネルギー化」への取り組みが課題となりますので、学園のすべての施設において省資源・省エネルギーに配慮したエコキャンパスを目指していきます。
- -インタビュアー
-
新校舎完成を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
-
名古屋女子大学に設置されているGHP
-
広い講義室や実習室でも迅速な冷暖房が可能な空調環境を実現
学校法人越原学園
〒467-8610 愛知県名古屋市瑞穂区汐路町3-40
電話 (052)852-1111 URL http://www.nagoya-wu.ac.jp/
地下鉄桜通線 瑞穂区役所より約300メートル
設置校
- 名古屋女子大学大学院
- 名古屋女子大学
- 名古屋女子大学短期大学部
- 名古屋女子大学高等学校
- 名古屋女子大学中学校
- 名古屋女子大学付属幼稚園
[取材日]2015年2月6日
日本経済新聞 名古屋支社版 平成27年3月10日朝刊掲載 「Ecology Case Study」広告特集より転載
記事一覧