新病院開院を契機に
新たな教育システムを導入
患者さんの生活時間を最大活用

-インタビュアー

愛知医科大学は2005年に「愛・地球博」の会場にもなった長久手市の、自然環境が豊かな場所にキャンパスがあります。大学の規模はどのくらいですか。

佐藤

25万平方メートルを超える敷地に1278人の学生が学び、2251人の職員が働いています。

-インタビュアー

歴史と教育理念を教えてください。

佐藤

今年で開学43年となる、新設医科大学20校の1つです。2000年には看護学部を併設し、現在は医学部と看護学部の2学部を擁する医系大学になっています。
教育理念は、最新の医療知識と技術を身に付けた教養豊かな医療人を育成することと、時代の要請に応えて地域医療に貢献できる医療人を養成するという2点に集約されます。

-インタビュアー

14年5月に新しい病院を開院しました。それを契機に、新たな教育にトライしているそうですね。

佐藤

まずは、教育用電子カルテのシステムを構築しました。学生が診断を進めていく思考過程をトレースできるよう、画像を交えた設問に解答して徐々にステップアップを図りながら学んでいく仕組みです。
紹介状を持たない患者さんを診察するための「プライマリケアセンター」も開設し、研修医や最終学年の学生のオン・ザ・ジョブ・トレーニングの場として役立てています。高度急性期医療ではない患者さんの診察と教育という2つの役割を兼ねた実践型教育を目指しています。

-インタビュアー

患者さんの生活時間の最大活用という観点でも、病院の運用を改革しています。

佐藤

これからの最先端病院で求められることの1つは、社会の高齢化につれて生産年齢人口を維持するための取り組み。つまり生産年齢の患者さんには一刻も早く社会復帰してもらうことです。
病院でも、患者さんに無駄な時間を過ごしてもらってはなりません。外来の通院患者さんが長時間待たないで済むよう、NAVITという端末を持っていただいて、3人前になるまで病院内のどこにいてもらってもいい仕組みを構築しました。採血・採尿センターには、隣接して分析機械を設置し、採血・採尿から分析結果が出るまでの時間を最短にしています。
また入院をされる場合も、すぐに治療して一刻も早く社会復帰をしていただくために、入退院支援センターが入院前から手厚く支援させていただいています。

愛知医科大学 学長
佐藤啓二氏

1976年名古屋大学医学部医学科卒業。97年4月同助教授。同年5月愛知医科大学医学部教授。2002年4月愛知医科大学医学部附属病院・病院長に就任。05年から愛知医科大学副学長・経営改革推進室長、14年4月から愛知医科大学学長を務める。このほか現在、中部日本整形外科災害外科学会評議員、日本小児整形外科学会評議員、日本整形外科学会代議員を兼務。

  • 愛知医科大学の様子(オアシスホール)

    愛知医科大学の様子(オアシスホール)

  • 再診受付機NAVIT

    再診受付機NAVIT

ライフラインを二重化
停電時のエネルギー源を確保

-インタビュアー

新病院のエネルギー利用の考え方を教えてください。

佐藤

大規模施設としてエネルギー需要を抑制することと、災害時でも医療を継続することの双方を実現しなければいけません。
新病院では、エネルギー供給部門にファシリティーサービス事業((株)シーエナジー)を導入し、常時熱源の状況把握を行いながら、最適運用に努めています。病院は平日、休日などで空調が必要なブロックが異なるので、最適運用を行い省エネを実行しています。また、低層棟の屋上に設置した集光装置で光を集め、エントランスの照明に活用しています。西側の大きなガラス面は二重化し外気温変動の影響を最小限にしています。
災害対応では、電力停電時に備えてエネルギー源を確保すべく、信頼できる都市ガスに着目しました。災害に強く信頼性の高い中圧A導管を引き込み、ライフラインを二重化しました。
また、最大の揺れを4分の1程度に抑えられる最新の免震装置を備えています。

-インタビュアー

東日本大震災での教訓を踏まえて取り組んでいるのですね。

佐藤

そうです。災害時には省エネとは逆に、一挙に来られた人の対処を念頭に入れなければなりません。エネルギーに関しても、医療活動の継続という観点から、他に頼らない覚悟で取り組みました。

  • 愛知医科大学に設置されているガスボイラー

    愛知医科大学に設置されているガスボイラー

ガス空調導入し
電力ピークカット
コスト面でも長期的に有利

-インタビュアー

今回、空調にガスシステムを導入しています。その理由をお聞かせください。

佐藤

大規模な病院ですので、施設の電力需要が大きく、節電や省エネの取り組みは必須です。そこで大型熱源機で建物全体を冷暖房するセントラル空調方式に最適なガス吸収冷温水機(ナチュラルチラー)を導入しました。各部屋の空調をする際、ナチュラルチラーにより、導入する新鮮外気を室内温度に近い温度に調節しています。
大きな利点として省電力化による電力ピークカットと二酸化炭素(CO2)削減が挙げられます。まだひと夏を経験しただけですが、ナチュラルチラーをベースで運転した結果、大幅な電力ピークカットの効果を実感しています。また、ボイラーを灯油から都市ガスへシフトしたことで、大幅なCO2削減を果たし、管理面も容易になりました。

-インタビュアー

導入に当たってコスト面をどのように検討しましたか。

佐藤

まず、持続可能性を念頭に何十年という単位で考えないといけません。大災害時のエネルギー安定供給、受電設備容量の抑制による電力ピークカット、環境負荷低減などを総括的に考え、長期的に見てアドバンテージがあるという結論に至りました。

-インタビュアー

エネルギー利用を踏まえ、新病院では様々な新しいシステムを取り入れています。今後はどのように展開していきますか。

佐藤

大学病院だから高度急性期医療だけをやればいいという時代ではなく、回復期、慢性期においても医療サービスを継続できる流れを作っていかなければなりません。現在、地域の医療機関と連携するためのヒューマンブリッジというシステムを築いています。大学病院で撮影したコンピューター断層撮影(CT)装置や磁気共鳴画像(MRI)装置などの画像を含め、患者さんの入院中のデータを地域の医療機関と共有できる仕組みの普及を目指しています。すでに特定の医療機関には端末をお渡ししてご利用いただいています。医療費削減に結びつき、地域を挙げて患者さんを守れる仕組みですのでぜひ充実させていきたいと思っています。
エネルギー関係の取り組みでは、築40年以上の研究棟のエネルギー効率化を進め、遺伝子治療・診断など新たな時代に適合するような新しい研究棟にしていきたいと考えています。

-インタビュアー

ハード、ソフト両面からの医療機関としての新たな取り組みに期待しています。

ガス吸収冷温水機(ナチュラルチラー)

  • 愛知医科大学に設置されているナチュラルチラー

    愛知医科大学に設置されているナチュラルチラー

アクセス

愛知医科大学

〒480-1195 愛知県長久手市岩作雁又1-1
電話 (0561)62-3311(代表) 
URL http://www.aichi-med-u.ac.jp/
地下鉄東山線 藤が丘駅より名鉄バス約15分(快速)

[取材日]2014年12月11日

日本経済新聞 名古屋支社版 平成27年2月6日朝刊掲載 「Ecology Case Study」広告特集より転載

ナチュラルチラー(吸収冷温水機)について

今回登場したナチュラルチラー(吸収冷温水機)についてはこちらをご覧ください。

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