曽祖父から5代続く外科医
先端医療機器をいち早く導入

-インタビュアー

まずは松波総合病院の沿革を教えてください。

松波

当院は私の曽祖父の松波英太郎が1902年、岐阜県加納市に開業した松波病院が始まりです。彼はそれから2年後の04年から5年間、プロイセン(現在のドイツ)に留学し、帰国後の11年に加納町病院として再び開設。県内で初めて全身麻酔を使った外科手術を実施しました。
その後、祖父の松波賢吾が33年に同県笠松町に松波外科医院を開設しました。88年には父の松波英一が同町に松波総合病院を新築し、現在に至ります。
松波家の長男は代々、外科医です。曽祖父の前の代は江戸時代で医学部などなかったので、日本で外科医が5代続いているところはおそらくほかにないのではないでしょうか。

-インタビュアー

新しい医療技術も積極的に取り入れてきたそうですね。

松波

当院は77年、コンピューター断層撮影(CT)装置を全国で3番目に導入しました。88年には磁気共鳴断層撮影(MRI)装置を東海地区で初めて取り入れました。
近年では2010年に320列マルチスライスCTや手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を導入。翌11年には県内で初めてダ・ヴィンチによる手術を成功させました。このような意思決定と行動の速さは民間病院ならではといえるでしょう。

-インタビュアー

まさに日本の民間病院のパイオニア的存在である松波総合病院ですが、松波理事長ご自身は何に力を入れていますか。

松波

移植医療です。日本の医療技術や設備は世界最高水準といえますが、残念ながら移植分野に関しては先進国のレベルに追いついていないのが実情です。
私は「移植医療なくして21世紀の医療はない」との思いから、国家を挙げて移植を支援しているオーストラリアに留学。1989年に生体部分肝移植の主治医を務め、世界で初めて成功しました。97年には当院で国内の民間病院初の生体部分肝移植を成功させ、それから現在まで600例ほどを手がけてきました。

社会医療法人蘇西厚生会
松波総合病院 理事長
松波英寿氏

1981年東京医科大学医学部卒業。岐阜大学医学部第一外科などを経て、89年Princess Alexandra Hospital (オーストラリア・ブリスベーン)Transplant Fellow。90年同Senior Transplant Fellow。96年松波総合病院副院長。2001年から松波総合病院理事長。

  • 2014年7月にオープンした北館

    2014年7月にオープンした北館

2014年7月に北館オープン
救急受け入れ態勢を整備

-インタビュアー

最先端の医療設備をそろえたNORTHWING(北館)が2014年7月にオープンしました。その狙いは。

松波

2つあります。1つは病院のベッド(病床)数の変化への対応です。それまでの病棟だった南館は1部屋6病床でしたが、1人当たりの居住空間を広く取ってほしいという患者さんのニーズに伴い、4病床にするための新たなスペースを確保する必要がありました。
もう1つは高齢者の介護やリハビリを担う老人保健施設の更新です。老健施設は築40年超で老朽化が進んでいて、ほかの場所への移転を迫られていました。
この2つの理由から、隣接する場所に新病院を建設して急性期医療の機能をそこに移し、南館は改修した上で老健施設を含めた慢性期医療の機能を集約する計画を立てました。
北館には集中治療室(ICU)の増設に加え、準集中治療室(HCU)を新設。災害派遣医療チーム(DMAT)と「災害拠点病院」の承認・認可を受けていることもあり、救急救命センターやヘリポートなども設け、遠隔地域からの救急受け入れ態勢を整えました。
北館のオープンによって全体の病床数は501となり、より幅広いニーズに対応できる病院に生まれ変わりました。

  • 松波総合病院のヘリポート

    松波総合病院のヘリポート

小型ガスコージェネを導入
電源セキュリティーを重視

-インタビュアー

新たに建設した北館にガスコージェネレーションシステム(CGS)を導入したきっかけを教えてください。

松波

当院では、1987年から南館に300kWのCGSを1台導入しており、電力デマンドの削減や節電を行ってきました。また、発電時の廃熱を給湯に利用することにより省エネ性を追求してきました。その節電・省エネ効果の実績を評価し、新たに建設した北館では35kWの小型CGSを4台導入しました。その理由に省エネ性能の向上と電力負荷に応じた稼働台数の制御の実現、メンテナンスの容易さなどが挙げられます。

-インタビュアー

導入に際して工夫した点はありますか。

松波

発電時の廃熱を給湯のみでなく空調にも利用できるジェネリンクを採用しました。廃熱を受け入れる設備を複数設けることで幅広い時間帯で廃熱を余すことなく有効利用できるようにしました。地域に根付いた施設として環境対策にも貢献した取り組みです。
また、当院は災害拠点病院として大規模災害発生時でも院内の様々な機能を維持しなくてはいけません。そのためには電源を複数確保しておくことが不可欠です。
そこで今回、電源セキュリティーを重視し、停電対応型CGSを採用しました。これにより、停電時でもトイレの照明やエレベーターなど非常用発電機で対応していない設備の電力をコージェネで供給できるようになりました。
そのほかにも、初期投資を抑えるため、国の分散型電源導入促進事業費補助金を活用しました。北館におけるCGSの省エネ効果が認められて補助金の採択を受けることができ、導入費用を抑えることができました。

-インタビュアー

具体的な効果は出ていますか。

松波

電力デマンドの削減により商用電力の平準化と節電、電力料金の抑制を実現しています。
また、省エネ効果の向上のため、廃熱の利用方法については今後も引き続き検討を重ねていきます。

-インタビュアー

そのほかの省エネ対策を教えてください。

松波

再生可能エネルギーでは太陽光発電システムを設置して、院内の電力に使用しています。
空調は電力使用で大きな割合を占めますが、建物の断熱性を高めることで、より少ないエネルギー消費で快適な室内空間を生み出せます。そこで北館には遮光性の高い窓ガラスを採用し、窓から出ていく熱を抑えています。
さらには今後、電気自動車(EV)で来院する方の利用を想定し、北館の駐車場に充電ステーションを設置しました。このようにエネルギーの効率的な利用に向けた様々な取り組みを展開しています。

-インタビュアー

最後に、今後の抱負をお聞きします。

松波

当院の理念は「地域住民の皆様に、安全で質の高い医療・福祉を効率的かつ継続的に提供する」です。そのために曽祖父の代から365日、患者さんを受け入れています。今後も救急に強い病院として発展していきたいと考えます。
また、2012年には地域医療支援病院の承認を受けました。我々は岐阜県南部の中核病院として、引き続き地域社会に貢献していきます。

停電対応型ガスコージェネレーションシステム

  • 松波総合病院に設置されているガスコージェネレーションシステム

    松波総合病院に設置されているガスコージェネレーションシステム

  • 松波総合病院に設置されているジェネリンク

    松波総合病院に設置されているジェネリンク

アクセス

松波総合病院

〒501-6062 岐阜県羽島郡笠松町田代185-1
電話 (058)388-0111(代表) 
URL http://www.matsunami-hsp.or.jp/
名古屋鉄道名古屋本線「笠松駅」下車徒歩約15分
笠松町巡回バス有り

[取材日]2015年1月8日

日本経済新聞 名古屋支社版 平成27年2月19日朝刊掲載 「Ecology Case Study」広告特集より転載

停電対応型ガスコージェネレーションシステムについて

今回登場した停電対応型ガスコージェネレーションシステムについてはこちらをご覧ください。

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