岐阜市が掲げる旗印を
体現した最新施設
- -インタビュアー
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「みんなの森 ぎふメディアコスモス」がオープンして半年以上が経過しました。市民からの評判はいかがですか。
- 細江
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たいへん好評です。1月までに65万人が来館し、土曜日、日曜日になると開館待ちの行列が見られるほどです。図書館では読み聞かせなども行っているので親子連れも多いです。
- -インタビュアー
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施設の概要を教えてください。
- 細江
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図書館や市民活動交流センター、展示ギャラリー、展示ホールからなる複合施設です。エントランスを入って左側を「絆の拠点」と呼び、自治会活動やボランティア、NPOなどの人たちに使ってもらえるようにしています。右側は「文化の拠点」として絵などを展示したり、ちょっとしたコンサートや講演ができるスペースを用意しています。
2階は「知の拠点」となる図書館です。教育立市の拠点として特に充実させています。現在の蔵書は30万冊ですが、将来的には90万冊まで増やしていきたい。閲覧席・学習席を910席配置し、中核市の市立図書館の座席数としてはトップレベルです。
幅広い年齢層と様々な目的の方々が来館されることで年間100万人以上の来場者を見込んでいます。
- -インタビュアー
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多彩な繋(つな)がりが生まれそうですね。
- 細江
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まさにそれを意図しています。毎年初めに、一年がどんな年になってほしいか思いを込めた一字を発表しており、2016年は「繋」(つなぐ)としました。これは、岐阜市の長い歴史をはじめ、現代・未来へ、国境も越えいろんな資産や文化、芸術を繋ぎたいという思いを込めたものです。岐阜市は来年で織田信長公が岐阜に入城して450年という節目を迎えることから、年間通じて信長公関連のイベントを実施します。姉妹都市のイタリア・フィレンツェ市の協力でミケランジェロをはじめとした巨匠たちの作品の展覧会も開催したいと考えています。また、2016年はマイナンバーも始まり、これまでばらばらに存在していた個人の情報を一つに繋ぎ、匿名化したビッグデータを活用した多彩な政策も考えられるという期待も込めました。
- 岐阜市長
- 細江茂光氏
1948年岐阜市生まれ。71年京都大学卒業、同年三井物産入社。12年間の米国勤務、物資開発本部サービス事業開発部長などを歴任。2002年退社し岐阜市長就任。現在で4期目を務める。主な役職は全国市長会評議員・相談役、全国治水期成同盟会連合会副会長など。
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岐阜市立中央図書館
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ドキドキテラス
豊富な地下水、太陽と
ガスをベストミックス
- -インタビュアー
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そうした思いをすべて体現した施設なのですね。できるだけ自然エネルギーを活用していこうというコンセプトとも伺っています。
- 細江
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半球形のグローブを天井部に据え、形そのものが自然に換気できて採光できる造りです。起伏のある屋根には一般家庭50戸分の太陽光発電パネルと300平方メートルの太陽熱集熱パネルを置いています。
- -インタビュアー
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最新の建物なのに木のぬくもりがあり空気が流れているのを感じます。
- 細江
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床輻射(ふくしゃ)の居住域重点冷暖房と湿度も最適に管理できるデシカント空調により、体感温度で評価する快適性と省エネを両立した微気候空間を実現しています。空調に豊富な地下水と太陽熱を利用しているのも特徴です。長良川の伏流水がある岐阜市の地下水量は浜名湖の4倍ぐらいともいわれ、水温が夏は冷たく、冬は温かいという特性を生かし循環させて冷暖房に活用しています。
- -インタビュアー
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ガスシステムもかなり積極活用していると伺っています。
- 細江
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主に空調の効率化と災害時のエネルギー補完性能向上を目的にガスシステムを導入しました。
ガスと電気を併用した、バランスの取れた空調システムを実現し、システムの中で揚水した地下水の再利用も進めて揚水量を抑制しています。
- -インタビュアー
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地下水を空調にどのように利用するのですか。
- 細江
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電気で駆動するヒートポンプで地下水を一次利用し、ガス吸収冷温水機(ナチュラルチラー)で二次利用します。地下水などへの影響を抑えるために揚水量を抑えているのですが、一次利用だけの場合、冷房の場合ですと空調対象面積の半分ほどしか賄えません。冷却水温度を高く設定しても機能し、太陽熱集熱パネルからの豊富な太陽熱も効率的に活用できるソーラーナチュラルチラーを併用することで全面的な空調が可能になり、地下水も最大限有効利用できています。開館後、半年間でくみ上げた地下水は5.3万立方メートルであり、年間目標値の15万立方メートル以下に抑えられる見込みです。
- -インタビュアー
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ガス、電力、太陽光発電とエネルギーのベストミックスに注力しています。特に災害時のエネルギー安定化を志向されているということですが。
- 細江
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東日本大震災規模の災害に見舞われると、電力の需要と供給バランスが崩れる懸念があります。電力が抑制されたとき、電気をガスで代替できる仕組みを構築しました。施設運営に支障を来すことがないよう、ソーラーナチュラルチラーと太陽光発電を優先運転させる設定にすることで、災害時にデマンド値を抑えることによって電力のピークカットが可能になり、電力安定化を図っていきます。
2015年の実績としましてはカフェレストランがオープンしていないこともありますが、デマンド値を700キロワットと予想していたところ455キロワットでした。
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ぎふメディアコスモスに設置されているナチュラルチラー
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ぎふメディアコスモスに設置されている太陽熱集熱パネル
省エネのコンセプトは
新市庁舎にも継承
- -インタビュアー
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大きな省エネ効果を生み出しているのですね。
- 細江
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ほかにも省エネに配慮した建築材料やLED照明も多用し、全体で1990年の標準の建物を基準として消費エネルギーを半分に抑える計画です。
実は、ぎふメディアコスモスの南側に、新しい市庁舎を建設することが正式に決まっています。やはり入りやすさを主眼にしたコンセプトにし、当館との相乗効果によってさらなるにぎわいを創出していきたいと思っています。ガス、電気、再生可能エネルギーなどにより、エネルギー源の多様性を確保するなど、当館で採用したエネルギー思想を参考にしたいと考えています。
- -インタビュアー
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最新のぎふメディアコスモスを拝見し、自然の恵みを最大限に生かして省エネを実現するとともに、にぎわいの場を創造していきたいという岐阜市の強い意志を感じました。今後生まれる市庁舎と併せ、ますますにぎわいが創出されることを期待しています。本日はありがとうございました。
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せせらぎの並木テニテオイルミナード
岐阜市 みんなの森 ぎふメディアコスモス
〒500-8076 岐阜県岐阜市司町40番地5
電話 (058)265-4101
URL http://g-mediacosmos.jp/
日本経済新聞 名古屋支社版 平成28年3月17日朝刊掲載 「Eco REPORT」広告特集より再編集・転載
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