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排ガスボイラ蒸気の高効率運用
温水吸収式冷凍機の高効率運用
温水蒸気化システムの導入
バイナリー発電機の導入
スクリュ式小型蒸気発電機の導入
蒸気駆動エアコンプレッサの導入
コージェネレーションシステム導入までには大きく分けて3つのステップがあります。
コージェネレーションの計画は、導入目的や事業内容、負荷想定などの条件を整理することから始めます。主な条件を以下に示します。ここで整理した条件は、後の設計段階における設計条件となり、非常に重要なため、具体的な条件設定が必要となります。
導入目的 | □電源セキュリティ □特高受電回避 □省エネ性・環境性向上 □経済性 □その他 | |
---|---|---|
事業内容 | □熱供給事業 □電力供給事業 □自家消費 | |
□エネルギーサービス事業 □ESCO事業 □PFI事業 □自己所有 | ||
負荷想定 | ○電力・熱(冷熱、温熱)の月別・時刻別負荷パターン確認 | |
電力設備計画 | 系統連系の可否 | □系統連系 □系統分離 |
逆潮流の有無 | □有 □無 | |
電源セキュリティ | □BOS □無負荷待機 □電源供給継続 | |
○重要負荷の確認 | ||
システム設定 | 原動機種別 | ○発電量と廃熱量のバランス確認 |
運用方法 | □YSS □WSS □DSS | |
廃熱利用方法 | □プロセス加温 □空調(温熱) □空調(冷熱) □その他 | |
環境保全計画 | ○NOx規制値の確認 | |
○振動・騒音規制値の確認 | ||
シミュレーション向け単価条件 | ○ガス・電力・その他料金の確認 | |
○メンテナンス費の確認 | ||
○イニシャルコストの積算 | ||
○CO2排出原単位の確認 | ||
○その他付加価値の確認 |
□はサイト毎のニーズにより、選択(複数選択可) ○は確認項目
計画条件を基に、コージェネレーションシステムの機器、台数などを設定します。一般にコージェネレーションシステムは容量の大きいものほど、kW当たりの設備単価が安価となりますが、負荷に対して過大な容量の設備を導入すると、廃熱が有効に利用できず、効率的な運転が実現できません。機器の選定にあたっては、エネルギー利用先の需要をできる限り正確に把握し、コージェネレーションシステムの適正を考慮した上での選定が不可欠です。
機器の選定が終わったら、省エネ性、経済性、環境性(CO2削減効果)の評価を行います。評価はエネルギー使用量、ランニングコスト、CO2排出量を従来システムとコージェネレーションシステムそれぞれのケースで試算し、比較検証を行います。
ご参考
CO2削減効果の評価において、コージェネレーションシステムによる発電電力は火力発電所における発電電力を削減するものとして、火力発電所の排出原単位を用いることが妥当であると考えられます。
シミュレーションにより試算した省エネ性、経済性、環境性(CO2削減効果)の定量評価に定性評価を加え総合評価を行います。例えば、電源二重化、非常時対応、瞬低対策などの電源セキュリティ等を目的として導入する場合には、その定性評価に重点を置いて評価します。
設計段階におけるシステム設計は、計画段階において決定した諸条件を元に、電力システム、廃熱利用系統の各設備について機器選定からはじめて、発電機室の設計まで順次行います。また周囲条件(自然・周辺環境、インフラ)、建築条件(設置スペース、設置環境)、関連法令に注意しながら進めていきます。
関係法令と届出書類(抜粋)
法令 | 届出書類 | ガスエンジン | ガスタービン | |||
---|---|---|---|---|---|---|
10kW未満 | 10MW未満 | 10MW以上 | 1MW未満 | 1MW以上 | ||
電気事業法 | 工事計画(変更)届 | ○ | ● | ○ | ● | |
保安規程(変更)届 | ○ | ● | ● | ● | ● | |
使用前安全管理審査申請 | ● | |||||
ボイラータービン主任技術者選任届 | ○ | ● | ||||
消防法 | 発電設備設置届 | ○ | ● | ● | ● | ● |
○:条件により提出が必要 ●:必ず提出が必要
電力システムの設計においては、全体の設備容量から、電力デマンド、方式(逆潮流あり、なし)を電力会社との協議により設定します。 電力会社の商用電力系統にコージェネレーションシステムを接続(系統連系)する場合は、まず電力会社との協議が必要となります。またコージェネレーションシステム側の故障や系統側の事故発生時、事故の除去、事故範囲の極小化を図るために、保護継電器が必要となります。
廃熱利用先は、給湯、暖房、冷房などが一般的で、利用先によりその有効利用度は異なります。給湯や暖房の場合は、ほぼ100%の廃熱エネルギーを利用することができますが、冷房の場合は温水吸収冷凍機などの機器の効率を考慮する必要があります。また給湯負荷は年間を通じての熱利用が期待できますが、暖房負荷は期間が限定されます。したがって、排熱の利用先を検討する際には、設備効率を考慮した有効利用度と利用期間を考慮し、給湯>暖房>冷房 の順番で選定することが一般的です。廃熱利用設備は、設備を配置する順番により廃熱利用率が変わるため、注意が必要です。熱利用は高温から低温へと多段的に利用(カスケード利用)することで回収率を高めることができます。
温水吸収冷温水器は廃温水温度が低下すると運転出力が低下するため、まず最初に温水吸収冷温水器へ廃温水を送ります。次に、給湯と暖房では給湯の方が必要温度が高いため、給湯、暖房の順に廃温水を送ります。廃温水利用系統の最後は、冷却塔により廃温水の余剰熱を放熱し、基準温度以下にしてガスエンジンに戻します。これはガスエンジンの冷却不足などによる故障を防止するためです。
廃熱を蒸気で回収する場合は、蒸気ボイラからの蒸気と共通の蒸気ヘッダーに接続し、蒸気吸収冷凍機、暖房、給湯などに利用します。コージェネレーションシステムから出る廃熱蒸気を有効に利用するために、蒸気ボイラの設定圧力よりも廃熱蒸気の圧力を少し高く設定します。これにより蒸気需要が低い時は、蒸気ボイラーが停止し、コージェネレーションシステムから出る廃熱蒸気を優先的に利用することができるようになります。
ご参考
近年は現場のニーズに合わせた、様々な廃熱利用機器が登場しています。余剰廃熱を減らし、廃熱の利用率をさらに向上させることが可能です。
発電機室の設計において留意するポイントには、(1)排気設備 (2)換気設備 (3)防音 (4)防振 (5)法律に基づく設置条件 (6)保守・点検があります。
- (1)排気設備
排気がスムーズに流れないとガスエンジンの出力・効率が低下することがあります。そのため、原動機の排ガス量から最低限必要な排気管口径を確認し、次に管路の抵抗損失の算出を行い、最適な排気管口径を選定します。 - (2)換気設備
原動機におけるガスの燃焼、発電機室温上昇の抑制、建築基準法及び労働基準法で定められた運転員向けの空気量を確保するために必要です。発電機室内で空気の流れが悪くなると、局所的な高温部が発生し、設備に悪影響を与える可能性もあるため、空気が滞留しないように配慮が必要です。 - (3)防音
環境基準が各自治体により定められており、対策が必要です。原動機の騒音対策としては、吸音材を内張りした建屋やエンクロージャーへの設置、遮音壁の設置、排気管中へのサイレンサの設置などがあります。 - (4)防振
機器と基礎の間への防振材の設置、機器の接続配管・排気管へのフレキシブル継手設置などの対策を講じます。防振材としてはゴムパッド、防振ゴム、空気ばね、金属スプリングなどがあります。対策を講じても振動は完全に除去されないため、原動機の設置場所は建物の中間階を避け、地下や別棟に設置することが望まれます。 - (5)法律に基づく設置条件
電気事業法及び消防法による規制を受けます。コージェネレーションシステムは一般的に常用発電であるため、発電所としての取扱いを受けます。発電所として一般の人が自由に出入りできないように、「へい」や「さく」で区切るなどの処置が必要です。また、消防法により非常用発電設備と同等の設置基準が求められ、保有距離や発電機室の構造などを考慮する必要があります。 - (6)保守・点検
点検を安全かつ容易に達成するため、設備配置を十分に検討し、重量物搬出用の天井クレーン、十分な開口を設置することが望まれます。また、日常点検用の架台を設置すると、さらに保守・点検し易くすることができます。
コージェネレーションシステムの建設工事は、機器メーカーへの発注に始まり、官庁提出書類の提出、基礎工事、機器据付工事、試運転を経て、最後に完成検査を受けて完了となります。コージェネレーションシステムの建設工事は、開始から完了まで約1年間ほどの工期となります(機器の製作期間が、メーカー、機種により異なるため変動はあります)。
建設工事工程の一例(1MW以上のガスエンジンの場合)
コージェネレーションシステムに使用する原動機の種類や出力などにより、各種法令に関連する手続きが必要となります。
関連する法としては、電気事業法、消防法、高圧ガス保安法、建築基準法、労働安全衛生法、公害関連法規(振動、騒音、大気汚染、ばい煙など)があります。これらの法に関連する手続きについては、コージェネレーションシステムの条件により手続きの有無や内容が異なるため注意が必要です。
系統連系に際しては、電力会社との事前協議を行う必要もあります。各種法令手続きはそれぞれ提出時期が異なるため、注意が必要です。
ご参考
コージェネレーションシステムを導入する際、省エネ量やCO2削減量に応じて国の補助金や税制優遇を受けられる場合があります。補助金や税制優遇制度については、こちらからご参照ください。
着工前には工事内容を図書により確認します。コージェネレーションメーカーから発注者側へ提出される図書には、機器仕様書、機器外形図、機器取合に関する図面(基礎図、配線取合図、配管取合図、信号取合図)などがあり、工事はこの図書を元に進められていきます。建設工事には多くの工事会社が関係し、連携を取りながら工事を進めていくことが重要です。各工事会社の所掌範囲、取合点、取合方法や工事日程を図面や現地で事前によく確認し、工事を進めていきます。
工事の作業工程を把握するために、全体工事工程表を作成します。基礎工事、機器の搬入・据付、配管・配線工事、消防検査、試運転、引き渡しまでの全工程を記載します。各工事会社の工事開始時期と完了時期を明確にし、進捗管理や安全・品質の管理に活用します。
着工後には、定期的な会議(定例会)を開催し、工程・安全・品質の管理を行います。
現場工事での予期せぬ事態による工程遅れなどに対し、全体工程表を見直したり、工事予備日の設定などを行います。また、機器搬入時の重機使用や、火気使用作業、高所作業などの危険を伴う作業を把握し、安全に工事が進められるようにします。また、工事を進めていくうちに設計変更が必要になった場合も性能を満足するように、各関係者協議により、問題解決を図ります。
- (1)消防検査
管轄消防署に発電設備設置届出、危険物貯蔵所・取扱所の届出、少量危険物貯蔵・取扱の届出などを行った場合、それぞれの届出の事項を履行する前に消防検査を受ける必要があります。例えば、少量危険物貯蔵・取扱の届出を行った場合は、貯蔵タンクに危険物を貯蔵する前に消防立会検査を受けます。 - (2)総合試運転
設備据付後に総合試運転を行います。ここでは、ループチェック、シーケンス動作試験、起動試験、非常停止試験、無負荷運転、インターロック試験を経て、最終的に負荷運転を行います。負荷運転においては、いきなり定格負荷で運転することはせず、少しずつ負荷を上昇させ、運転データを確認しながら、最終的に定格負荷での運転確認を行います。 - (3)自主検査・使用前自主検査
仕様書に基づいた諸性能を満足してことを確認するために自主検査を行います。試験内容についてはメーカーへ事前に確認しておきます。
1MW以上のガスタービンコージェネレーションシステムの場合は、電気事業法に定められている安全管理審査に準じた使用前自主検査を行う必要があります。 - (4)完成検査
発注者側またはコージェネレーションシステム管理者の立会いの上で、仕様書の諸性能やその他協議により決定した要件を満足していることを確認します。完成検査により、仕様を満たさない項目が確認された場合は、残工事(手直し工事)のリストを作成し、発注者側の承認(検収)を受けます。またコージェネレーションシステムの確定仕様書、各種図面、機器・計器リスト、試験成績書、取扱説明書などについてまとめた完成図書の提出をメーカーから受けます。
ご参考
安全管理審査とは、これまで国または指定検査機関で実施されてきた使用前検査、溶接検査、定期検査に代わり、平成12年7月1日以降、経済産業大臣により指定された「指定安全管理審査機関」が、事業用電気工作物の設置者が行う自主検査(法的事業者検査)を定められた基準どおりに実施されているかを確認するための審査です。